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Contribution & Interview

引越し先は雲の上!?ある教室のチャレンジ

2020.10.19

8月初旬のある日。パソコムプラザの代表の増田由紀さんのフェイスブックに不思議な投稿がされた。リンクをたどって開いた先には驚きの文言が並んでいた。

“私どもパソコムプラザは、教室開業20周年の新たな形として、2020年9月末をもって現在の店舗契約を解約し、教室の場所を移転することとなりました。 移転先は雲の上、つまり「インターネット上」になります。“

20年も新浦安で続けてきたパソコン・スマホの教室。生徒さんのほとんどが「シニア」と呼ばれる世代で「習う」より「集う」ことを目的としてきた方も多いはず。「オンライン教室のみ」が成り立つのか、どうしたらそんな大胆な決断ができるのか、お話を伺った。

シニアが多いがゆえの苦悩

2020年のはじめごろ「中国で変な風邪がはやっているね」と話題にしていたものが、あっという間に日本でも蔓延。あれよあれよという間に「自粛」も広まり、4月には教室での講座を開講できなくなった。

誰も来なくなった教室で一人悩んでいた。

6月、なんとか教室を再開。感染症対策もできることは全て行った。講師はフェイスシールドをつけ、パソコンは2台に1台間引き、天井からは醜いビニールシートがぶら下がった。教室は開け放ち、レッスンが終わるたびにすべて消毒。それでも「シニア世代を集めて教室を開催するとはなにごとか」という意見が漏れ聞こえてきた。

「もし感染者がでたら」と気が気では無い中での教室運営。「これをいつまで続けていけばいいのだろう」。

現状維持は後退を意味する

今の教室の広さではこれまでどおりの人数を教えられない。かといって広い教室への移転は難しい。生徒も先生も通学・通勤という危険と隣り合わせ。これを打破するには「オンラインレッスンのみにするしかない」と思いたった。

「新規の集客が難しくなるかもしれない」「現状の生徒さんの大半が卒業されてしまうかもしれない」という不安もあった。でも「現状維持は後退を意味する」「この変革は今しかできない」と自らを鼓舞した。

幸い3月に入って「嫌な予感がした」増田さんは、急きょ各クラスの授業に「オンラインレッスン」を導入していた。すべての生徒さんがオンライン授業を体感済みだったのだ。Webカメラも30個ほど仕入れてある。

すべての教室で増田さん自らが事情を説明し理解を求めた。希望する生徒さんのお宅にはWebカメラを持って訪問し無償で設定を行った。各生徒さんのデバイス(PC、スマホ、タブレットなど)の所持状況も確認。一人が最低2種類のデバイスを持てるよう、教室のPCの払い下げなども行った。さらに「エンジョイタイム」という無料のオンライン講座を開講し慣れていただいた。

結果、想像を遥かに上回る生徒さんが残ってくださった。

新しい教室を生徒さんと作る

講師陣にも必要な環境を提供し、テレワークのルールも新たに作成した。

画面だけをみる授業は集中力を保ちにくいため、これまで2時間だった授業時間を90分に短縮した。毎回紙で配布していたテキスト類は廃止。データを共有し生徒も講師も各自が自宅でプリントする形にした。
講師陣の働き方も大きく変わったことになる。

でも「教室に『こんにちは』と入ってきて、新しいことを学んで帰る形は残したい」と、受講者用サイトには「ROOM」というボタンが並んでいる。Web会議の招待状を使わず、サイトの「ROOM」ボタンから各授業にログインする形にしたのだ。

「変わったこともあるけれど、私達は変わらず教室で待っていますよ」というメッセージがそこには込められている。

はじめは接続に手間取った生徒さんも、今では2つのデバイスを上手に使いこなしてレッスンに参加している。「新しい教室を生徒さんと一緒に作っているんです」。

生徒さんの将来のために

今では生徒さんから「病院でのオンライン面会がスムーズにできた」「オンライン帰省ができた!」という嬉しい報告をもらっている。オンライン教室だけになったことで「マスクなしでの交流」が復活したことも嬉しいという。

とはいえまだまだ慣れないことも多いし、この先うまくいく保証もない。「まずは半年後に『こういうお教室もありよね』と生徒さんにいってもらえること」が目標だ。 さらにビジネスマン・ウーマン向けの講座も拡充していく。通学が難しかった彼らもオンラインなら参加しやすい。

「スマホは道具」「ITスキルは必須」と語る増田さん。「医療もいずれ遠隔になる。Web会議システムが使えれば安心して受診できる。知っていて損はないどころか知らないと生きていけなくなる」。

パソコムプラザのテーマは「今の時代はどんなものなのかを伝え、それを体験・経験してもらうこと」。リアルな教室がなくともそれができることを証明しようとしている。

増田さんはとにかくよく笑う。辛いことも悲しいことも笑い飛ばしているように見える。
雲の上の教室は「試してみよう」と思う人を、いつでもどこでも満面の笑顔で受け入れてくれる。

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パソコムプラザ
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