デジタルスタンプラリーが教材に!-大阪教育大学附属平野小学校の取り組み
デジタルスタンプラリーと聞いてどのようなことを思い浮かべますか。「お遊び?」と思われる方も多いのでは。
今回はデジタルスタンプラリーを「教育のツール」としてお使いいただいた事例をご紹介します。
お使いいただいた大阪教育大学附属平野小学校 山中圭輔教諭の事例発表を取材しお話を伺いました。
Info
大阪教育大学附属平野小学校
デジタルスタンプラリーとは
コロナ禍を経て、利用が増えてきているデジタルスタンプラリー。これまでの紙のスタンプラリーと違い、各人のスマホのみでスタンプの収集ができる「非接触」のスタンプラリーだ。
QRコードを読み込んでスタンプを貯めるものが多いが、今回山中教諭が使ったのはリコー製の「RICOH Clickable Paper」という技術をベースにしたものだ。RICOH Clickable Paperを使用すると、ポスターや看板、石碑など既存の印刷物や設備を読み込むもの(マーカー)に設定したスタンプラリーが実施できる。
今回は子どもたちが描いた「絵」をマーカーに設定して実施したという。
ごみ問題からデジタルへ
デジタルスタンプラリーを実施したのは小学校4年生。自分たちの「好き」をブースで展示し、保護者をはじめとした外部の方に見ていただくというイベントで実施した。
イベントは全部で4回行ったというが、そのうちの2回目にデジタルスタンプラリーを使用した。実は初回のイベントでは紙のスタンプラリーを実施していた。しかし、初回イベント後の社会の授業で「ごみ問題」を学んだ子どもたちから、「イベントでもごみが出ないようにしたい」という声が出た。
通勤で使う電車内で「デジタルのスタンプラリーがある」ということを知っていた山中教諭は、子どもたちにそれを提案、実施にいたったという。
図工の授業とも連携
マーカーに設定する絵は、図工の先生の協力を得て作成した。ちょうど「KOMA KOMAアニメ」を学んでいた時期だったため、スタンプの取得前・取得後のイラストの作成に移行しやすかったという。
マーカーに設定する絵も図工の時間に作成。105名の児童がイラスト案を作成し、Googleフォームを使って投票を実施、16枚を選んで使用した。
さらに、スタンプ収集後のプレゼントも子どもたちの絵が使われたフォトフレームに。「デジタルでありながら手作り感のある、QRとは違ったスタンプラリーになりました」と山中教諭は言う。
算数の授業でログを活用
デジタルスタンプラリーの特徴として、ログと呼ばれるデータが収集できることがあげられる。何時何分にどのスタンプがどの端末によって取得されたかが記録されているのだ。手作業ではとうてい取得できない、大きなデータが溜まっている。
実社会ではこれをさまざまな方法で分析し、販促や地域の回遊促進につなげているが、小学4年生の子どもたちではそこまでの分析は難しい。しかし「データの活用」を学んでほしいと考えていた山中教諭は、なんとかして子どもたちにも理解してもらおうと奮闘。結果、スタンプの取得数を場所別、時間別に集計したものを子どもたちに提供した。
このデータを元に子どもたちは「何時ごろ」「どこに」ブースがあると効果的に集客できるかを考えた。結果を3回目のイベント実施に反映したという。
ICT夢コンテスト優良賞を受賞
山中教諭は今回の取組を「データ駆動型社会に対応!ビックデータを活用した、校内イベントの改善を考える学習」としてまとめ、ICT夢コンテストに応募、みごと「ICT夢コンテスト優良賞」を受賞した。
「教育の情報課推進フォーラム」で、実践事例発表を行った山中教諭。まだまだ課題があるとしながらも、こうした取り組みの意義を熱く語っていた。
実社会では当たり前のように行われているデータ分析を、子どもたちにもわかりやすく伝えるためのツールとしての「ジタルスタンプラリー」の可能性を感じる発表だった。
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